一楽旅館を正面から。このあたりは防火地域なので、この木造建築が焼失してしまったら同じ姿では再建できません。(地図①)
奥のこちらの建物が戦後間もなく建てられた部分。昭和33年の売防法施行まで、男女の逢瀬の場として使われていたようです。
右隣のベージュの建物は売防法後に建てられたものだそうです。これが入り口。
玄関を開けるとすぐにこんな見事な丸窓が。恐る恐る「ごめんください〜。予約してたものですが〜」と言うと、すぐにおかみさんが来てくれました。暫しこの建物談義で話が盛り上がります。
建物の中に入ると、中央に見事な池があります。家の中に池があるなんて粋だし艶っぽいですね。
鯉ものんびり泳いでいます。
階段を登って2階に向かいます。見たこともないような窓の意匠にウットリ。
2階はご覧の通りの吹き抜けの回廊になっています。建物自体はそこまで大きくないけど、この吹き抜けのおかげでかなりの開放感を得られます。
2階から階下を見下ろします。先程の池がみえますね。身を乗り出したら落ちそうです。
扇子状にくり抜かれた壁。良いですね。
こちらは瓢箪の形にくり抜かれています。瓢箪は女性の体を表したものと言われています。色気を感じさせる意匠ですね。
各部屋の入り口。こんな細かいところまでこだわりを感じさせてくれます。
床面にも桜の花びらでしょうか。芸が細かい…
こちらの部屋はおかみさん曰く「(売防法施行直前の)最後まで(男女の逢瀬に)使われていた部屋」と説明を受けました。(この部屋も普通に泊まれます)
こちらは別の部屋。特に何の変哲もない普通の部屋だと思いきや…中央奥のふすまを開けると…
現在は使われていませんが、隠し風呂が!面白いですね。ここでいろいろな情事があったんだろうなと妄想が広がります。
自分が泊まった部屋で照明を消すと、窓に外の光が差し込む。この光をどれくらいの男女が見たのか…
宿として評価してみると、隙間風は入ってくるし、セキュリティも結構怪しい。砂壁は一部剥げ落ちているし快適とは言えないです。ですが、その欠点を補って余りある貴重な経験をさせてくれることは確実。文化遺産として国が保護しない限り、おそらくおかみさんの代でこの建物も終わりでしょう。行くなら今しかないと思います。
余談:
この一楽旅館周辺ですが、こんなクソ寒い時期に道端でパイプ椅子に座っているおばあさんがいたりします。ラブホテルもちらほら。そして感じる視線、ピリついた空気…
そうです、この街は未だ「現役の街」なのでした。